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二本の燭台

100点 2012/12/23 8:18 by 出木杉のびた

レ・ミゼラブル

純粋なセリフはほんの僅か、後は全て歌で物語が進行していく。伝わり易く練り込まれた歌詞と、印象的なフレーズを残す楽曲の素晴らしさで158分をずっしりと堪能できた。実にパワフルで感動的な仕上がりに大満足である。ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、 アマンダ・セイフライドと、単独でも主役を張る俳優4人の競演も豪華。全員歌が達者なのにも驚かされる。予め録音した歌を口パクで演技するのではなく、撮影時に実際に歌ったものを同時録音したという。役者の演技と歌が当然ながら見事にシンクロして、その途中の息使いまで生々しく感じられて臨場感を増し、成功している。

各シークエンスの映像の迫力も満点だ。オープニングの大勢で船を曳くシーンの船の巨大さ、過酷な労働の有様、受刑者達の扱われ方が瞬時に伝わって来る。トニー賞のミュージカル主演男優賞を受賞した経歴のあるヒュー・ジャックマンの歌と演技は、やはりお見事である。ジャン・バルジャンと執念の男ジャベール(ラッセル・クロウ)との出会いを鮮烈に印象付ける。

どの画面、どの楽曲も素晴らしいのだが、ファンテーヌ(アン・ハサウェイ)の『夢やぶれて』が実に切なく苦しく胸に迫る。身をやつし不幸のどん底。痛々しくカットされた短い髪。カットなし、アン・ハサウェイのアップのみで捉えられる誤魔化しの効かないショットの迫力が物凄い。鼻水まで画面ではっきりと分かってしまう。彼女の身の不幸に同情し、何とか助けてあげられないものかと切に祈りたくなってしまった。高校時代に合唱でカーネギーホールに、ミュージカルでもブロードウェイの舞台に立った実績のある彼女の歌唱もやはり素晴らしい。

アマンダ・セイフライドは『マンマ・ミーア!』で既にその澄んだ歌声を披露してくれている。本作での年頃のコゼットは、大切に守られている役どころなので、役者としてはあまり見せどころはないかも知れない。むしろ恋敵のエポニーヌ(サマンサ・バークス)の方が、心情が苦しいだけに儲け役であろう。マリウス(エディ・レッドメイン)とコゼットのデュエットに、エポニーヌが絡んでくる「心は愛に溢れて」では、高揚した恋する二人と、片思いの切ないエポニーヌの気持ちがひとつの画面に溶け合って、観ているこちらも感情が高まってくる。そのエポニーヌのソロで歌われる「オン・マイ・オウン」がまた素晴らしい。降りしきる雨の中、片思いの気持ちを歌いあげる。この脇のキャラクターにまで観客を感情移入させてしまう演技者と演出の力は本物だ。

ラッセル・クロウも、昔ロックバンドを組んでいたというだけあって、その歌声は力強い。高い建物のへりギリギリに立って、自分の信念を歌いあげる「星よ」。一歩間違えば、自分も転落してしまう場所であるのが象徴的に感じられ、執拗にジャン・バルジャンを追い続ける執念の男のイメージを鮮烈に見せつける。それにしても、パン一個盗んだだけで19年間も投獄されたジャン・バルジャンを悪い男だと決めつけてしまうこのジャベールの正義とは何なのか。更生を認めようとしない融通の効かない、物語の中での敵役だ。やがてその信念が崩れ去っていく場面の葛藤が凄い。

この物語は各キャラの葛藤、悩み苦しむ気持ちの見せ場が実に多い。愛する人の恋敵への手紙を手にしてしまったエポニーヌ。自分の身代わりに無実の罪を着せられた男を助ければ、自分の築き上げた立場を失ってしまうジャン・バルジャン。自分の正義を見失いそうなジャベール。愛する人の元に向うか、仲間と共に闘うのか迷うマリウス。練り上げられた葛藤の物語に、各キャラクターにいちいち感情移入させられてしまう、そのドラマツルギーが徹底していて見事である。

演技も歌も出来る俳優陣の名演に、何度も泣かされてしまった。各楽曲が感動的なこともある。特に「民衆の歌」が僕の頭から離れない。政治の横暴への不満から、学生の呼びかけに応じて次第に声を高める民衆たち。少しずつ力強く結束していく思いが伝わってきて、感情的にも盛り上がる。この歌は聴く者に希望と勇気を与えてくれる、実に素晴らしい楽曲である。

ジャン・バルジャンが譲ってもらった二本の燭台。これが切っ掛けで彼は善意と贖罪の人生を送って来た。彼の美しい気持ちとその行為に、観る者の心が浄化されていく。彼の努力は実を結ぶのか。ラストシークエンスは涙を堪えることが出来ない。ジャン・バルジャンの傍らに…。そしてラストシーンには…。辛い人生でも、善意ある情と信念を持って生き抜けば、やがては報われる。そう信じさせてくれるだけの説得力のある、感動の作品であった。

 

29人がこのレビューに共感したと評価しています。
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  • Re: 二本の燭台

    2012/12/28 16:16 by Stella

    初めまして

    レビュー読ませて頂きました。
    仰る通り、素晴らしい楽曲の数々に
    胸がいっぱいに・・・

    登場人物 それぞれの悲痛な叫びや
    愛の思いが伝わってくる歌声に感動。

    豪華なキャスト陣の本作に対する本気の思いが
    伝わってもきましたね。

    二本の燭台も、過去と未来を生きる証のように
    描かれていたようにも感じました。

  • ドリフ大爆笑;もしものコーナー

    2013/2/9 6:36 by 青島等

    おはようございます。出木杉のびた君

    しっかし、毎度毎度ながら感心するぜ、君の文章表現能力
    キングコング・ブルーザー・ブロディに匹敵するインサイドワーク
    反則スレスレ、カウント4.999…秒で止めるボキャブラリー
    (勿論、ネタバレの一歩手前…って言う意味だよ)

    今、ふと、閃いたのが、見出し…デス
    もしもハリウッド黄金期〜斜陽期の1,960年に
    歌の巧い俳優陣、いや、ミュージカルスター総出演なら

    ジャン・バルジャン…ディーン・マーティン(ウェルター級のアマチュアボクサー出身)
    ジャベール警部…フランク・シナトラ(実はラットパックで舎弟分ディーンに嫉妬していた)
    ミリエル司祭閣下…ビング・クロスビー(勿論、ティーンエイジ期のディーンが憧れた歌手)
    フォンティーヌ…ジュディ・ホリデイ(「ベルズ・アー・リンギング」でディーンの相手役)
    エポニーヌ…シャーリー・マクレーン(ラットパックの一員でディーン最多共演者)
    コゼット…デビー・レイノルズ(「雨に歌えば」の可憐なヒロイン)
    マリウス…エルヴィス・プレスリー(バラードの際はディーンを真似た歌唱法)
    テナルディエ…ジーン・ケリー(シナトラの兄貴分)
    同上記夫人…ベティ・ハットン(オバン臭い顔で声量は豊富な「アニーよ銃をとれ」ヒロイン)

    監督は無難なヴィンセント・ミネリ…彼が適任
    製作会社はMGMか?パラマウントか??

    でも、やっぱり、明朗快活すぎるな、このキャストでは

  • Re: 二本の燭台

    2013/2/10 5:20 by 出木杉のびた

    Stellaさん、はじめまして。
    今頃申し訳ありませんが、レスありがとうございました。

  • もしも、のびたが書き過ぎでなかったら…

    2013/2/10 5:32 by 出木杉のびた

    夢寝先輩、おはようございます。

    しっかし、毎度毎度ながら感心しますよ、もしも他の役者が演じたらシリーズ。プロデューサー、若しくは監督の素質がおありじゃないでしょうか。僕はどうも面倒くさがり屋なので、こういうことは全く思いつきません。というか、その前に諦めちゃう。しかし、他の豪華なキャストでの妄想映画館も、結構楽しめそうです。

    さて、相変わらずの「書き過ぎのびた」です。僕も今自分のレビュー読み直しましたが、確かにネタばれギリギリですね。自分でも冷や汗ものでしたので、少し省略しようと思いましたが、折角皆さんが共感して下さっているので、今回は手を入れずに、このままにさせていただきたいと思います。

    のびたのくせに生意気ですみません(笑)。

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