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いつでも夢を

80点 2013/11/30 6:22 by 出木杉のびた

昭和三十年代、映画館に勤める安川修平(藤井隆)は、映画上映中フィルムの不具合で、お客さんの間を持たせる為に、たまたま演じた座頭市のものまねが受け、以後幕間芸人として下関みなと劇場で活躍することになる。ただ、残念ながら、ここでの藤井隆の座頭市は、そんなに凄いとも思えない。歌でもギターはほとんど弾いておらず、歌は巧いが味がない。それなのにどうして人気が出てしまうのか弱いところだが、所詮素人芸という設定なので、後々食べていけなくなるという部分では、逆に説得力が出る。

舞台となる下関みなと劇場では、昔懐かしい映画が上映されている。『下町の太陽』『男はつらいよ』『網走番外地』『いつでも夢を』など、オールドファンにとってはお涙ものの作品が垣間見られるのも嬉しいところ。基本、映画愛溢れる作品だが、物語は父と娘の関係性に重点が置かれている。

橋本香織(伊藤歩)は九州のタウン誌にとばされて、そこに届いた一通のハガキから、昔活躍していた安川修平のことを知る。香織本人の地元でもある下関に赴き、修平の過去を調べることになる。香織の現在パートはカラーで、修平の過去パートはモノクロ映像だが、そこで上映されている映画がカラーなら、その画像も当然カラーである。また香織が修平の舞台を想像するシーンでは、カラーの香織と、過去のモノクロの観客が同じ画面に登場する演出が、流れも巧みでお見事だ。

修平の熱烈なファンであった平川良江(奥貫薫)と結婚し、娘の美里が生まれる。やがて映画は斜陽となり、観客も減り、修平の芸も受けなくなる。それでもずっと暖かく見守る良江の愛情が胸に迫るのだが、ここで在日の問題が首をもたげてくる。在日の差別については詳しく語られないが、修平がちゃんとした職業に就けないのも、そのせいではないかと臭わせる。食べていけない修平が、美里を置いたまま日本を離れ、それきりになってしまうので、大人になった美里(鶴田真由)は父を恨んでいる。

香織もまた、父・達也(夏八木勲)とはうまくいっていない。久々に実家に帰った時の、父親のよそよそしい態度から、父娘の関係性が伝わってくる。父の想いと娘の想い。どうして意志の疎通ができなくなってしまうのか。でも、心の底ではお互い愛しているはず。それが分かるから、香織は美里に修平と会うことを勧めたのだろう。修平の取材をしながら、香織自身も父親との関係性を見つめ直すことになる。

美里は同じく在日の宋義徳(津田寛治)と結婚していて、一人息子の成在(小清水一揮)がいる。息子に堂々と本名を名乗らせていることに、自国に対する誇りと、差別に対する抵抗が感じられる。修平には、この孫とも対面させてあげたい。そして浮かび上がる疑問。出版社に投書したのは、何者なのか。

歳老いた修平役が井上尭之。ザ・スパイダースのメンバーで、『太陽にほえろ』や『傷だらけの天使』の音楽などで有名だ。役者ではないので演技は下手くそ(尤もセリフはほとんどない)だが、演奏は天下一品。この歌声がまた味わい深くて、胸に沁みてくる。これまでの苦労が伝わってくるような、実に深みのある歌と演奏に感動させられる。修平も美里も、辛く苦しい人生を歩んできたことだろう。頑なな美里の心にも、父親の優しい歌声は忘れられない唯一の温かな思い出だ。

映画館で香織の頑張る姿を後押ししてくれる父親の姿もまた嬉しい。片意地張らずに、自分の心に素直になることが、心の平安をもたらすことになる。最後になったが、ずっと修平を見守り続けてきた、映画館の売り子・宮部絹代(藤村志保)の存在もまた重要で、実に温かかった。

 

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満足度データ

カーテンコール〈2004年〉
100点
4人(8%) 
90点
6人(12%) 
80点
8人(16%) 
70点
10人(20%) 
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採点者数
50人
レビュー者数
26
満足度平均
67
レビュー者満足度平均
72
ファン
5人
観たい人
16人

 


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