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あにいもうと

70点 2012/8/29 11:19 by 出木杉のびた

『虹をつかむ男』の続篇であるが、設定が微妙に変更されている。透明度の高い美しい南国の海に浮かんでいる白い物体。西田敏行演じる銀活男だった。流れるのは軽快なサンバのリズム、「ブラジル」。活男が目覚めたのは意外な場所だった。

活男は平山亮(吉岡秀隆)の家に一晩泊めてもらうが、これが寅さん以上に大迷惑な存在で笑いを呼ぶ。茶の間で大きな身体をできるだけ縮めて神妙にし、かなり気を使っている様子だがやることなすこと大ドジである。調子に乗ると饒舌になる。寅のアリアならぬ、活男のアリアか。渥美清とは一味違う親しみを感じさせる語りである。

亮の父親・肇に笹野高史。お茶の間での騒動では笑わせてくれる。亮の妹・咲枝に星野真里。兄思いの高校生で、亮を追いかける姿がいじらしい。亮はなかなか定職に就けずにいる。勤めても長続きしなくて父親と喧嘩してしまうのだが、これは亮の分が悪い。亮は結局活男の映画館に逃げ出そうとしているのだが、活男は南の島で巡回営業をしているようだ。そういえば、少し前のシーンで亮が口笛を吹いていたが、これも「ブラジル」であった。二人はどこかで繋がっている。

奄美群島の喜界島。亮が出逢うのが男の子を連れた母親・祝節子(小泉今日子)。家族の反対を押し切って、ミュージシャン目指して東京に出たが、訳ありの帰郷である。

活男はサブ(小薮千豊)という助手と一緒だが、これがなかなかとぼけた男で笑わせる。ここでの上映作品は『雪国』。南国の海で雪国なんて、なかなか洒落ている。映画が上映されると、スクリーンに影絵を映して遊んでしまう子供達。雪景色を見て大喜びで、こういう屋外上映会の楽しさが伝わってくる。映画内のラブシーンを見て、節子はちょっと肌寒いかのような仕草をする。これは結婚に失敗した女の照れであろうか。『雪国』の内容を僕は知らないので、もしかしたら節子の心境と重なるものがあったのかも知れない。

夜、活男はカラオケで歌っている。亮は初めて節子を見た時から、心奪われていたのが分かる。オデオン座のラストショーで上映した映画での志村喬の真似をする西田が巧い。

節子の兄・清治(哀川翔)は、反対を押し切って東京に行った妹を許せないようだ。節子を強く罵り、節子に近づく亮を殴る。兄としてかなり過剰な愛情であるように感じられる。こういう兄妹の関係は、成瀬巳喜男監督の『あにいもうと』と同じだと思っていたら、エンドクレジットに室生犀星の「あにいもうと」と出た。この兄妹の関係性の出典はやはりここにあった。そういえば映画『あにいもうと』でも兄が男を平手で殴っていたが、今作でも哀川翔は吉岡くんを平手で殴っていた。

罵る哀川翔を背景に、画面手前で耐えるキョンキョンのアップが良い。とても切ない表情に、語られないこれまでの苦労や悲しみが滲んでくる。じっと黙っていた父親(田中邦衛)の、娘を受け入れてくれる愛情が温かい。

後半突然、松江(松坂慶子)が登場する。ダブルマドンナだった。彼女はこの頃少しふっくらし始めている。名作アニメの上映会で活男と再会するのだが、昔同じ映画館で働いていたと言う設定だ。若い頃は言えなくても、歳を重ねると平気で言えることもある。二人のシーンは重量感が感じられた(笑)。

次の上映会ではトラブルで場内大騒ぎ。活男と松江のシークエンスで、過去活男が映画館のお客の前で歌ったことが話題になっていたので、ここで彼が歌うことはすぐ分かる。歌う西田が本当に巧い。節子がミュージシャン目指していたという設定も活きてきて、キョンキョンの歌声も聴けたのが嬉しい。会場は大盛り上がりで、本当にみんな楽しそうで観ているこちらにもそんな興奮が伝わってくる。

終盤の亮と節子の対峙。場所が彼女の実家という画的にロマンチックでない現実感が、切羽詰まった男の心情を伝えている。しかし、現実は甘くない。節子の感情表現の真意について、亮は考えを巡らせることになる。

一生続けられる仕事を見つける為に、亮が始めたこと。そして彼が島で学んだことは、以後の人生の心の支えとなるだろう。

 

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  • Re: あにいもうと

    2018/3/30 2:51 by 焼津のウサギ。

    前作は普通に地元のレンタルショップに置いてありましたが今作はどこの店にも置いてなくてネットレンタルでようやく観れました。
    前作から設定が変更され過ぎてて驚きましたし前作に比べて取り扱う映画の数も熱量もあきらかに減っていて物足りなさを感じました。
    島の開発事業現場でナウシカ上映の宣伝をしているところが皮肉が効いてて面白かったですが。
    前作の男はつらいよ追悼モードから抜け出そうとしたものの失速してしまい残念でした。
    ただ西田さん、小泉さんの歌うシーンはとても良かったです。


    そういえば『どこにもない国 前編』観ましたが島田ロケのシーンはまだですよね?
    前編はいったいどこで撮ったんだと思うようなロケーションが多く、撮影の豪華さが伝わってくるドラマでした。

  • Re: あにいもうと

    2018/3/30 6:06 by 出木杉のびた

    焼津のウサギ。さん、おはようございます。

    確か僕もレンタルショップで探して見つからず、ネットレンタルで観た作品だったと思います。昔の成瀬作品を彷彿とさせる山田洋次版「あにいもうと」で、寅さんシリーズの兄妹の変奏曲なのでしょうね。

    『どこにもない国 前編』は録画したまま見ていないのですが、エキストラ仲間の情報によれば、島田の撮影部分は後半だろうということでした。僕も参加しましたが、映り込みはほとんど期待できないので、飛ばし見で確認だけしようかな。

満足度データ

虹をつかむ男 南国奮斗篇
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採点者数
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レビュー者数
4
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レビュー者満足度平均
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観たい人
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