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演技と演技の“バトルロワイヤル”

100点 2011/7/23 22:12 by アイヤーダイ

バラエティ番組のヤクザネタドッキリなどで幾度となく使い倒され、半ば“ギャグ化”してしまってる例の効果音のごとき「チャララ〜チャララ〜」から幕を開ける本作。
本家を知らずに前記のパロディしか観たことない者が本作を目の当たりにすれば、この有名すぎるBGMの世界観が180度変わるはずである。
後の『北斗の拳』のオープニングを嫌でも彷彿とさせる、広島の原爆投下映像の直後に挿入されるタイトルとあの“掴みの音”・・・曲は冒頭のサビを通過するとまるで怪物の行進のごとく少しずつ、少しずつ、血で血を洗う混沌とした世界に突入していく様相を呈する。

ヤクザ映画の頂点と呼ぶべき記念すべきシリーズ第一作目。
この冒頭のタイトルバック、本作の世界観との見事なグルーブ感を醸し出す津島利章の挑戦的なテーマ曲とでのっけから血が騒ぎ、理屈抜きで興奮するのだから、やはり見かけ倒しの“ヤクザ物”とは威厳と風格からして次元が違う。

特に登場人物のスタート地点となる戦後混乱期の闇市シーンでは、これがホントに私が生まれるついこないだに作られた映画なのかと目を疑うほど、当時を知らない者にも否応なく納得させる説得力に満ちあふれ、現代のCGでは到底太刀打ちできぬエネルギーに満ち溢れている。
同じ戦後の闇市シーンが出てくる『地下鉄(メトロ)に乗って』とは月とスッポンどころの話ではない。
こうやって観ると数本の例外は別にすれば映画は時代を経るごとに退化しているのかといった“うがった”考えをしてみたくなるというもの。

本作では特に深作のトレードマークである手持ちカメラを大胆に使ったカメラワークや従来の舞踊のごとき殺陣を排除したリアリズム描写といった、ともすれば退屈な裏方技術論に偏ってしまいがちであるが、そのような楽屋の功績は専門用語を並べ立てずとも、この画面から放出している言いようもない熱気、登場人物達の弾ける魅力を感じれば、一目瞭然である。
いやむしろ、百も承知の優れた脚本や音楽、そして何よりも天才的深作演出をうんぬんする暇さえ与えないほど、各キャラの個性と魅力が画面の隅々まで迸り、それら互いの我と我のぶつかり合いが得も言われぬ相乗効果を生んでいるのだ。

ゆえに本作の鑑賞後脳内で再生されるのは、決まって登場人物の出で立ちや彼らが残す名ゼリフなのであり、それはすなわち物語に感情移入できていない事を指すのでは決してなく、むしろそれこそが感情移入の究極の形なのである。
幼児が決まって何度も“ウルトラマン”や“仮面ライダー”といったキャラのカッコ良さばかりに言及するのもこれと同様で、それだけ作中にどっぷりとはまっている証拠なのだ。
したがって、良くも悪くも魅力的すぎる、これら映画史上屈指の名キャラ群を語らずして本作は語れない。


「若杉の兄貴の隠れ家・・地図に書き込んで、サツにチンコロしたのはオドレらかぁ!」
シリーズ通しての(二作目は例外的に脇)主人公広能昌三役で一夜にしてドル箱スターとなった菅原文太。私がサモと並び“兄貴”と呼び崇拝する数少ないスターだ。
まあ何はなくとも本編を見れば彼の類い希な“カッコよさ”の虜となるだろう。
40歳にして不滅のヒーローをモノにした兄貴の、“渋さ”とも“粋”とも違うこれぞ文太ワールドとしか言えない絶大な人間味と底知れぬ安心感に浸るべし。
外道のオンパレードである本シリーズを通して唯一“仁義”を貫くヒーロー広能昌三・・・やはり彼しか主人公にはなれないのも納得の兄貴の魅力は、我慢の助演(第二作『広島死闘編』)で“退く”事の大事さを覚え、“したたかさ”を得てパワーアップした第三作『代理戦争』で爆発する。


「坂井の舌に乗せられやがって・・・オドレはどこまでバカかい!」
若い人には料理番組での東ちづるとの掛け合いでチクチクイヤミを言う“マイペース爺さん”のイメージが強かろうが、映画俳優金子信雄を目の当たりにすればその果てしなき強欲さ、人間の醜い部分だけで形成されたかのようなセコ悪ぶりに、圧倒されることだろう。
過去幾多のゲスキャラを演じてきた金子の十八番であるセコ悪ぶりの頂点は、やはり本作の山守組長をおいて他にはない。
もう見ていてその調子の良さ、呆れるほどのプライドのプの字も見当たらない腰砕けの軽さには、愛着さえ抱かせるほど(ここがとても重要)。
しかも上記台詞で“本物の悪”の片鱗を見せる時の凄みは半端無く、競艇場での再会シーンで椅子に座ったまま振り向き、文太兄貴を睨む別人のようなその形相・・・鳥肌が立った。
まさに悪役の申し子である。
死人続出でゾンビのごとく別の役で同じ俳優が何度も“転生”する本シリーズにあって、文太兄貴と共に全作不死身。
コスずるさの安心感もズバ抜けているのだ。


「あんたぁ、初めからワシらが担いどる御輿(みこし)やないの、御輿が勝手に歩けるゆうなら歩いてみいや、のう!」
この啖呵を切る時の松方弘樹の肌の色具合、声の艶、サングラス中の眼光(予想)・・・どれをとっても完璧なまでの仕上がり・・・おそらく演技終了後にこのカットを確認した本人の優越感は計り知れなかったことだろう。
実年齢にして10歳近く年下である松方の、文他兄貴に一歩も引けをとらないタメ演技は迫力満点。さらにはなぜか弟分にナメられる微妙なスキと終盤で文太兄貴の取り出すマッチを拳銃と誤解し奇声を発して命乞いをする外見とのギャップをも絶妙に醸し出すところは、上手い、上手すぎる。
最終的にヤクザ者にはなりきれない“弱さと大衆臭さ”を兼ねた強面ヤクザという超難役を、ほとんど“地”のごとく見事に演じきり、後の続編では“イッてる系”での抜群の才も発揮し、以降自身のトレードマークとなっていく(『県警対組織暴力』『北陸代理戦争』)。
本作は二世俳優のジンクスを完膚無きまでに叩き潰した、俳優松方弘樹の真の出発点である。


「ワシャ、死ぬゆうて問題じゃないが・・・女房がのう、腹に子がおって、これからの事思うちょったら・・・可哀相で可哀相で(号泣)」
この金子演じる山守組長に勝るにも劣らぬ田中邦衛の泣き落とし・・・仁義もヘッタクレもない、強い者だけにその場その場で寝返る尻の軽さはほとんど虫ケラ並であり、まさしく金子第二号。
特に競艇場での金子とタッグを組んで文太兄貴と対峙するセコ悪コンビネーションは必見!
『北の国から』しか彼を論じたりモノマネをしないのは宝の持ち腐れもいいとこ。
彼特有の口を尖らせた喋り方は絶対に本作のような尻軽外道に実に良くマッチしている。
いや、本作のためにあの“喋り方”が生み出されたと言っても過言ではない。


「やれんのぉ〜、いちいちワシらのやる事にケチつけられたんじゃあ・・・」
今でこそ二時間ドラマでの温厚オジさんと化してしまった渡瀬恒彦の本台詞時のハジけっぷりと台詞の絶妙な“はしょり方”、声の色気には本当にゾクゾクしてしまう。
一般に兄より演技力があると言われる渡瀬だが、本作に限らず70年代の渡瀬の怖い物知らずの斬り込み隊長ぶりは他の追随を許さず、兄とは比較にならぬほど。
この刃物のような“捨て身オーラ”が本作では画面狭しと暴れまくり、より大人なイカつさを醸し出す松方との絡みではその個性がさらに際立ち、素晴らしい相乗効果を生んでいる。



その他言い出したらキリがないほど本作は名優、名演、名台詞の宝庫であり、まさに演技と演技のバトルロイヤル状態である。
実際、製作当時はほとんどの役者が本作大ヒット以降の知名度からはほど遠い境遇であり、「我こそはこれでのし上がってやる」といった屈強な雑草魂が、劇中の戦後の荒廃からのし上がろうともがく荒くれ者達の熱気に見事に投影され、結果奇蹟のようなエネルギーを生む事に成功している。
監督に言えるのはよくもこれだけの強面、アクの強い面子をまとめ上げたものだと思う。
いや、中には裏方の制御をも超えた、役者の意地とプライドがぶつかり合ったその時の一瞬でしか生まれない“奇蹟”があったに違いないのだ。
何度も言うように本作の観る者を巻き込む熱気は尋常ではなく、迫力あるバイオレンス描写と共に、後のジャッキーやサモハン映画にも多大な影響を与えた(特にサモハン作品には顕著)。

熱きパワーは画面を飛び越え、海を越え、伝染する。



【私の待機作『映画戦争』の映光社長は絶対に金子信雄にやってほしかった・・・こうなれば彼以上の逸材を死んでも探す覚悟である】

 

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満足度データ

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採点者数
75人
レビュー者数
31
満足度平均
78
レビュー者満足度平均
81
ファン
20人
観たい人
22人

 

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