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雰囲気は似てますが「モロッコ」とは正反対の映画ですナァ。
2012/6/7 18:07
by
クリス・トフォルー
『生誕百年記念 谷口千吉監督特集』にてスクリーン鑑賞。
谷口・黒澤明共同脚本、反戦映画としても名高い作品だが、やはり、『肉体の門』の田村泰次郎の生み出した、戦場でですら恋に燃え上がらずにはいられない慰問団の歌手・春美を、熱く扇情的に演じてみせた“李香蘭・山口淑子の映画”という気がした。
中国との前線で孤立している城砦を守備する、帝国陸軍歩兵一個大隊。副官・成田中尉(小沢栄)付の上等兵・三上(池部良)は、敵襲から救い出した慰問団の歌手・春美(山口淑子)の、激しい求愛に応えられずにいたが、成田の執拗な誘いを拒み続ける春美に、次第に心を寄せてゆく。或る夜、三上は夜襲を受けた砦を防戦してたが、負傷して、敵中に取り残されてしまう。三上を追って、砦の外へ出た春美は、負傷した三上とともに、中国兵の捕虜となるが・・・。
『軍人勅諭』や『戦陣訓』に従順な下級兵士と、恋に一途に身も心も捧げる女(原作では従軍慰安婦の設定)。二人の恋の運命が、上官の横暴がまかり通る砦の中で、多くの仲間の兵や女たちの心を揺り動かしてしまう。
多くのスタッフ、キャストが、実際の戦場や前線を経験している時代に生み出された、戦場のリアルな日常の描写が、今となるとなお更貴重だが、実際には臨めなかった、帝国陸軍の暗部への抵抗のシーンも、フィクションを超える実在感がある。反戦がスタイルではなく、個々人の実感として作品に込められている時代が、確かにあったのだ。
2011年の「マイウェイ 12000キロの真実」と似ていても、伝わってくる思いが段違いのラストシーンです。
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