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近松物語 4K デジタル修復版 Blu-ray

『近松物語 4K デジタル修復版 Blu-ray』を価格比較。★★★★(85点)『近松物語』に対するみんなのクチコミ情報などもあります。

近松物語 4K デジタル修復版 Blu-ray
84点
監督 溝口健二
出演 長谷川一夫,香川京子,進藤英太郎,南田洋子,小沢栄太郎
発売日 2017年11月2日
定価 5,184円(税込)

 

価格比較

近松物語 4K デジタル修復版 Blu-ray 3,853円 (税込)
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商品詳細情報

販売元 KADOKAWA / 角川書店
発売日 2017年11月2日
ディスク枚数 1
形式 Blu-ray


ぴあ映画生活ユーザーによる「近松物語」のレビュー

  • 80点 男と女の不思議

    2007-03-24  by 星空のマリオネット

    国際映画祭の連続受賞等もあり溝口健二の名声がさらに高まった時期、1954年公開の映画です。この年には、黒澤明監督の「七人の侍」や木下恵介監督の「二十四の瞳」、オードリ・ヘップバーンの「ローマの休日」等、今でも愛され続けている名画が公開されています。
    衆目を集め長谷川一夫を始めて起用した作品ですが、個人的には戦前の作品の方が混沌としたエネルギーがあるように感じ、受けた感銘も大きかったような気がします。本作では良い人間と悪い人間がはっきり分けられていて、物語も曲折はありながらもすっきりしており、分かりやすい古典的なドラマになっています。

    長谷川一夫主演の映画を観たのはこれが始めてで、円熟の中にも清潔な色気のある芝居を観ることができたのは嬉しかった。ご主人の奥さん(香川京子)に対して奉公人の立場をしっかり守っている前半から、彼の思いを知った奥さんから激しく求められ動揺し受け止めきれずに身を引こうとしながらも、愛に殉じていく様を見事に演じています。
    物語を実質的に大きく展開させた、孤独な二人を乗せた小船のシーンの美しさと不思議さは、男と女のそれを象徴しているかのようです・・・

  • 90点 愛の勝利

    2008-03-18  by バグース

    近松門左衛門の世話浄瑠璃、歌舞伎では「大経師昔暦」通称「おさん茂平」で有名な密通劇。
    小さなDVDでは気分が出ないので、劇場で30年ぶりに再見。
    長谷川一夫と香川京子の色気・可憐な南田洋子・進藤英太郎・浪花千枝子等の憎たらしい敵役と役者が揃っている。又経師屋のセットはお見事で江戸時代に浸れるし、歌舞伎風のBGMも雰囲気にピッタリ。

    古い映画なのに印象は現代的で、ひょんな事で不義者とされた二人の逃避行がやがて真実の愛へ進む過程が細やかに描かれる。情に篤い茂平の父親との場面や特に「おさん」が狂った様に「茂平!茂平!」と足を引きずりながら坂を駆け下る場面は圧巻で盛り上がる。

    二人の引き回しの場面で、見物している解雇された経師屋の女性奉公人の一言が、真の勝利者が誰かを示して印象的であった。

  • 100点 心臓の鼓動の如く響く太鼓

    2015-01-12  by すかあふえいす

    2度目の鑑賞。

    戦後の溝口健二では「山椒大夫」よりも好きな作品。

    早坂文雄の神がかった音楽と宮川一夫の素晴らしいキャメラワークがドラマを最高に盛り上げる。
    太鼓の連打で始まるオープニング、混み入った店の混沌から始まる物語。それぞれの仕事に打ち込む男女、劇中人物にとって変わらない日常の風景。それが金をめぐり周辺人物を巻き込みんで人々の運命を狂わせていく。
    ヒロインは遠目にはマユ無しの暗い女、よく見るとマユは薄いが恋に燃える表情と瞳をした女性。
    物語は京都において巻き起こるある男と女の恋の話。
    京都御所の絵巻を任されるほどの大経師である以春。御所との違法な取引、若妻をはべらせ、あろう事か女中にまで手を出そうとする筋金入りのエロ親父。女の胸元ではなく、袖の方から手を入れるとは・・・溝口らしい。

    その以春に半ば強引な形で妻にされた女性おさん。
    以春に次ぐ発言権を持った彼女だが、好きでもない男に芽生える筈も無い愛情、自分を嫁に出した家族への複雑な気持ちで満たされぬ日々を送っていた。

    まだまだうら若き彼女は以春の下で働く一番の絵師である茂兵衛の若さに惹かれていく。
    だが茂兵衛には既に、お玉という女性と婚約を誓う仲だ。

    お玉と親しい間柄でもある彼女は二人を見守ろうと思いつつも、何処かもどかしさのようなものを覗かせる。

    序盤はこのように主要人物の関係をぐるりと見せていく。
    そこに通りかかる磔にされ罪人となった男女二人。これが既に伏線となっていた。

    男は仮に浮気をしても許される事があるが、女が姦通すれば問答無用で罰せられる不平等な時代。

    時代に対する鬱憤が、生活を追い詰められた人間の心にも一時の迷いを生じさせる。

    中盤の逃走劇、逃げ出した後を物語る扉、闇夜の水面に浮かぶ船の中で激しく抱き合う二人。

    一度は覚悟した“死”を引き止めるのは“言葉”だ。

    「愛していますっ・・・!」
    普通ならどうとない言葉だが、自分を立場上の関係でなく、一人の人間として尽くそうとする心を理解した女にとって、何物にも代え難い生きた言葉となる。

    「死ぬのは嫌だ生きていたいっ!」
    人間の生存本能をゆっくりとむき出しにする描写が凄い。揺れる船の上で激しく抱き合う二人。
    「今更何をおっしゃいます」って、おまえが「好き」だなんて言うからだろうがよ・・・まったく。
    二人は絆を深めるように幾度となく抱き合う。髪を乱し、愛故に逃げる男を愛故に声をあげて追いかける女。心臓の鼓動の如く轟く太鼓。

    だが、愛していた筈の男からその言葉を聞けなかった女の方はただただ辛い。残され生きながらえるよりも、いっそ一緒に心中しようと言われた方がどんなに気が楽だっただろうか。
    「つんつらつん」と陽気なお客、一人悲しみにくれる女との対比。

    逃げた男の父親、女の母親も相当辛い。
    「俺の気持ちも解からんで!」
    「解からんで幸せや!!」
    そんな二人を怒りながらも助けてしまう親心。

    だが逃げる男女二人も本気だ。追われる日々から必死に逃げ切ろうとする二人。
    「もう“奉公人”やない!あたしの“旦那”さんや!」
    こんなエロイ声で追いかけられてこんな事言われたら誰だって逃げるのやめるわい。

    お玉涙目。

    しかし、逃げ続ける男女も運命からは逃れられない。野菜売りの馬鹿野郎オオォッー!!

    終盤の怒涛の追い込み、愛する女のために戻ってくる男、どうせ捕まるならテメエも道連れだぜ以春〜!!!

    冒頭の栄え具合と終盤の落ちぶれ振りの対比。
    ラストで手を繋ぎ、幸せそうな顔で“あの場所”に向かう二人。どんな形であれ一緒に結ばれた事に満足した顔だ。本当は悲しいはずなんだが、この場面からは暗さは感じない。むしろ充足感が伝わって来る。上から罪人を見るように映されるロングショットは街の人々の視点で、下から哀しき恋人たちを映すロングショットは店の仲間たちの視線だろうか。溝口にしか撮れないラストだねえ。

    ただ不満があるとすれば、残された女のその後をちょっとでも描いて欲しかったかな。何度見てもそこだけは欲求不満になりそう。それ以外は大満足です。

  • 100点 極上のラブストーリー

    2004-09-25  by 元映画野郎

    溝口特集2本目
    キャー鳥肌がたってきたよ。
    すんごく、素晴らしい。こんな純愛映画みたことないよ。
    香川京子のいじらしさに。心がばっくんばっくん。
    もう、あなたのためなら、どこまでも。
    近松の心中ものって、もっと人間の業とか、やるせなさとか。
    どろどろしたイメージだったのですが。
    結構この映画モダンで、純粋に人を愛する心がストレートに伝わってくるよ。
    その意味で、現在でも通じる極上のラブストーリーに仕上がっている。
    たぶん、香川京子に気品の高さが、『心中天網島』の岩下志麻なんかとは、
    違う色香を感じさせるんだよね。
    彼女『ちゅらさん2』なんかで見ても、お年をめしてもすごくお美しいですしね。
    逆に、所作としては、正当派であろう長谷川一夫のしなの入った動きは、
    少し鼻につきますね。
    でも、本当にいいんだな。この作品。
    ドラマとしての完成度が抜群に高く、この点が美しさのみが目に付く『山椒太夫』を
    超えている。

    当然のことながら、
    被写界深度の深い奥行きのある宮川一夫のカメラ。
    琵琶湖での心中未遂の船の移動する構図。
    映画史に残る名シーンは、本当に美しいですが。

    この映画の素晴らしさなんて、いくら言葉をつくしても表現できない。
    ただ、ひたすら映画ファンならずとも劇場で見ていただきたいですね。
    日本が世界に誇る名作中の名作。
    上映は、あと6回。場所は、大阪OS劇場シネCAP 時間はAM10:00〜。
    絶対後悔しないことをお約束します。
    逆に、死ぬまでに後何回この映画を劇場で見れるかを考えると、
    多分私は、明日も劇場に足を運んでいるでしょう。

  • 100点 鳥肌が立つ大感動の溝口作品

    2015-06-06  by jimmy09

    初見は1980年に高田馬場・ACTミニシアターだったので、本日(2015年6月6日)、35年ぶりに鑑賞。
    内容も場面も、まったく忘れていた(笑)
    学生時代の自分は、何を観ていたのだろうか…こんなにも凄い傑作なのに。


    50歳を過ぎた最近になってから、溝口健二監督も既見作品・未見作品を観直しているが、
    この映画、も〜んのすごい傑作であった。

    不義密通の咎で追われる茂兵衛(長谷川一夫)とおさん(香川京子)が、役人に追われて2人で舟に乗るシーンの美しさに目をみはる。また、このシーンで流れる笛の音が良い。

    2人の逃避行は続くが、茂兵衛の父の納屋に潜んでいるところを見つかって、おさんは連れ戻され、茂兵衛は縄をかけられるあたりは悲劇的。

    しかし、逃げて来た茂兵衛は、おさんの実家で再会する。→おさんの母親役の浪花千栄子が、これまたイイ味を出している。

    その後のシーンで、「晴れ晴れとした顔」が素晴らしく、鳥肌が立つほど感動した。


    日本映画を代表する大傑作のひとつである。

  • 100点 日本映画史に溝口健二がいることを誇りに思う。

    2005-06-25  by ekoeko

    VHSで。
    『西鶴一代女』はまだ観たことがないのですが、
    『雨月物語』や『山椒太夫』とならんで、
    1950年代の溝口健二監督の傑作のひとつ。
    メロドラマっぽさがちょっと強い、という感じはあります。
    でも、
    全世界をあっと言わせ、
    日本映画の実力を見せつけた、その演出と映像美は
    いま観ても色あせてはいません。
    ところで、
    成瀬巳喜男監督の作品がDVDで出るそうで。
    緊縮財政をしいて購入財源を確保しなければなりません。

  • 90点 「和」の魂をこもった、102分

    2018-10-28  by 湯瀬美紀

    巨匠溝口健二監督の後期の傑作に、管弦楽のオーケストラを使わずに、太鼓や三味線などの和楽器を使った音楽に歌舞伎のような演劇のような感覚て演出した表現がよかったね。最後の幕切れまでロマンスのような時代劇と和の魂がこもった、102分でした。

  • 70点 馬上の二人

    2017-01-26  by デニロ

    有名な作品なのでどこかで観ていたかと思っていたが、5分も経たぬうちにちゃんと観てはいないのではないかと思う。近松の話はいろいろとあるので混同しているようだ。今回は香川京子の新聞インタヴューを読んで観に行こうと思ったのでした。あの記事を読まなかったらずっと観たつもりになっているところでした。

    苗字帯刀を許されている経師というものがどれほどたいそうなものかは知りませんが、本作の大経師新藤英太郎の有様を見ているとしっかりとした仕組みを作り収益を上げているようだ。そして、よく耳にする身内には厳しい大金持ちの態度がよく表れている。

    新藤英太郎の後妻として嫁いで来た若き香川京子は一見何不自由なく暮らしているかのようだが、実家は火の車で、嫁に来るに当たりいささかの援助を受けたりもしている。

    そんな背景なのだが道ならぬ道に入ってしまったのは手代長谷川一夫と香川京子。このふたりやることがドジで間抜けなカメ的な役割で、相当な不器用さ。観ていて苛々としてきます。その挙句に不義密通の疑いをかけられ逃避行。新藤英太郎は不義密通による科を恐れ妻を連れ戻し何もなかったようにしようと画策するも、番頭や商売仲間に足を引っ張られ思うにならない。

    ひょんなことから逃避行を続けるふたりだったが疲れ果て心中を企てる。が、いまわの際に「お慕いしております」との長谷川一夫の言葉に、「死にたくない。生きたい。」と答える香川京子。

    ふたりは捕えられ引き廻しの上、磔。新藤英太郎は取りつぶし。

    引き廻されている香川京子と長谷川一夫のふたりには笑みが浮かんでいるが、死んで花実が咲くものか、と今のわたしは思ってしまう。

  • 80点 引き算の美学

    2015-12-22  by 踊る猫

    江戸時代。大商人の以春の元で真面目に働く茂兵衛が風邪を押して床から起き上がる場面からスタートする。以春は女中奉公に出ていたお玉に言い寄っていたが、別宅を持たせると口説いた際に茂兵衛と夫婦約束をしたと言ってしまう。以春の妻であるおさんはカネに困っており、茂兵衛に相談し茂兵衛は以春にカネの無心を願い出る。怒った以春は茂兵衛を罵倒するが、お玉がそれは自分から申し出たことなのだと嘘をつく。おさんはお玉と話をして、以春がお玉に言い寄っていることを知る。おさんの心は以春から離れてしまう。茂兵衛はお玉にお礼を言おうとするが、そこに居たのはおさんだった。ふたりが一緒に居るところを見た同僚は、彼らが不義密通を重ねていると誤解する。ふたりは逃げることになる……これがプロットである。

    溝口健二作品を観たのはこれが初めてである。充分に楽しめたかと言われれば答えに詰まってしまうというのが本当のところだ。あまり普段から古い映画を観ないことや、そもそも映画自体を観るようになったのが本当につい最近のことなのでまだまだ楽しみ方を分かっていない……なんてことは言い訳にもならないのだろう。だがもう少し言い訳を重ねれば、私は映画を観るにあたってどうしても「スジ」に目が行ってしまう人間なので映像美を楽しめないという弱みを備えてもいるのだった。その意味で溝口作品ならではの長回しやカット割りといった技法を楽しめたかどうかというと甚だ疑問である。

    だが、最初は江戸時代の映画を観慣れていない人間として若干退屈さを感じながら観始めたのだけれど、次第にふたりの逃避行に引きずり込まれてしまったこともまた事実である。長谷川一夫と香川京子の演技が素晴らしい。ふたりが湖の上でいよいよ追い詰められて心中を図る場面があるが、おさんを演じる香川京子はいよいよという時になってそれでもなお生きていたいと願うようになる。不義密通は江戸時代にあっては死刑に処される重罪である(実際にそれを明示するシーンが登場する)。それでもなお生きたいという一途な思いを、迫力ある演技で表現していると思う。

    長谷川一夫の演技もまた素晴らしい。男なのだけれど、何処か微妙に色気を感じさせる。男臭いというのではない。むしろ女形が似合いそうな中性的な佇まいを感じるのである。茂兵衛とおさんの関係は、奉公人とその奉公される側の妻という身分的に釣り合わないものである。ここにも前述した不義密通と同じくらい強烈なタブーがある。しかしふたりはそれを超えて愛し合おうとするわけである。その恋の持つ迫力に呑み込まれるようにして観てしまった。なるほどこれは今の目で見ても充分に迫力のある映画だな、と思わされてしまったのだ。

    先述したように映画に関しては私はまだまだ素人なので、カメラワークや演出の妙を堪能したとは言い難い。こればかりは他の溝口作品を観て勉強することが肝要となるだろう。だが、これは褒め言葉としてはかなり安直な部類に入るものであることを承知の上で言えば、今の目で見ても全然古く見えない。悲恋の持つ強烈な力を、しかし今の映画の目に慣れた人間からすればむしろ淡々としたタッチで描き切った一作であるなと思わされる。これは早速『雨月物語』などの作品を観なければならないなと思わされてしまった。こんな監督を知らないとはもったいないことをしていたものだ。

    最後の最後、ふたりは結局捕まってしまう。そしてふたりは縛られて晒し者にされてしまうわけだが、ふたりは手を固く握って離さない。そこにふたりの強烈な恋愛の証が記されている……先ほどから同じことしか書いていないが、未熟な観衆故にこんなことしか書けないのが限界だと思っていただきたい。ふたりの成り行きは先述したプロットの整理から分かるように半ばほどまでは偶然がもたらした悲劇なのだけれど、途中から彼らは自分から身を投げるようにしてその非業の運命に呑み込まれて行く。江戸時代の封建的な制度の狭苦しさがもたらすその悲劇は、繰り返しになるが本当に悲しい。

    そんなところだろうか……いや、思い返してみても(いや思い返せば思い返すほど)この映画の凄味を感じさせられる。無駄なショット、シーン、台詞といったものが一切ない。引き算の美学で余剰を削ぎ落とされたことから生じる、淡々とした中にあって本当に重要な要素だけを説明抜きで抽出した映画だという印象を受けるのだ。だが、これ以上のことはもう語れそうにない。これもまた繰り返しになるが、私の映画鑑賞歴の浅さ故に解釈も必然的に浅はかになってしまうのだった。そんな中途半端な感想を駄文として綴って、この一文を〆たいと思う。

  • 100点 長谷川一夫&香川京子で正解!

    2015-02-05  by いくけん

    あえて、虐げられた存在である手代、茂兵衛を、華のある大スター長谷川一夫に演じさせた溝口。
    その苛烈なまでの演技指導は長谷川の大輪のオーラを被い込む。
    しかし、映画の進行内に、その男の完璧に整った顔故に、隠し切れない美のオーラの瞬間が表出する。被虐のなかに垣間見える美。
    人形の姿かたちに見とれ、その妖しさの内に人間を錯覚するかの様な倒錯した夢の瞬間。 長谷川はまさに文楽の美しき人形となっていた。

    この人形の相方としては、相当程度の高いの美貌が要求されよう。
    当初、美麗で古風な風情もある木暮実千代が予定されていた。
    木暮なら艶やかで儚(はかな)い人形となっていただろう。
    映画は、汚い俗世の中を二つの美しき人形が拙く歩いていく、夢物語的な要素の強い(ある意味で前近代的な)見事な心中ものの文楽となっていた筈だ。

    木暮に他の仕事が入り降板。
    急遽(きゅうきょ)香川京子がおさんを演じる事になった。美貌に於いては十分に合格。だが長谷川よりも香川は23歳も若い。その辺りは 少し釣りあわない。
    しかし、香川には等身大の人間を演じ切る演技力と、現代的な個性、張りのある通りの良い声を持ち合わせている。

    映画は始まる。
    あの時代、即ち果てしなく保身的で拝金主義な時代(現代も一寸の狂いもなくそうである。)に対峙して、二人は純愛を貫いて行く。
    おさんの台詞「旦那さんは私の事、妻やと思てへん。思うとったら私の言う事信じてくれる筈や。」、「お前の(好き)の一言で死ねんようになった。死ぬのはいやや。生きていたい。」香川京子の迫真の演技と張りのある声、即ち『近松物語』は、確実に、現代の我々の社会も打ち抜いて来る。
    『浪華恋歌』『祇園の姉妹』における山田五十鈴の叫びのように。(溝口もさぞ満足だった事だろう。)

    悪人新藤英太郎、小沢栄、慈愛に満ちた親浪花千恵子、引き回しを見守る様々に反応の違う群衆、それぞれの演技、二人の感情と運命のうねりを写し取るかの下座音楽、丁寧な大映美術、光沢の豊かな宮川一夫の撮影、全てが一級品で堪能の一言。

    ラストシーン、引きの画面であるが、二人の姿をカメラは延々と撮っていく。
    これは溝口の長谷川一夫に対する最大のリスペクトの表現ではないだろうか。
    「よっ、これでこそ大スター、俺のきつい指導に耐えて、良くがんばったな。」と。

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