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『ファントム・スレッド』の映画論評・批評


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“優美な亡霊”としての映画  

written by:宇野維正
(2018/05/25更新)

ジャンル 人間ドラマ
気分 しみじみと感動できます
原題 PHANTOM THREAD
製作年/国 2017年/米
配給 ビターズ・エンド=パルコ
ヘッド館 シネスイッチ銀座
時間 130
公開日
監督

 


『ファントム・スレッド』


映画の美徳は曖昧さにある。ポール・トーマス・アンダーソンは『ファントム・スレッド』においてそう定義する。本作で(長編の劇映画では初めて)撮影まで手がけることとなったアンダーソンはこう言う。「テレビドラマは過度に鮮明にし過ぎている。すべてが余計に調整されていて、くっきりし過ぎだ。僕らはそれと戦っていたように思う。ストリーム配信用の映像にはしたくなかった」。クエンティン・タランティーノやクリストファー・ノーランと同様、今でもフィルム撮影を強固に貫いているアンダーソンだが、少なくとも彼は復古主義者や伝統主義者ではない。“テレビシリーズの時代”において映画は何を表現するべきか。それを考え抜いた先にしか“映画の現在”がないことを知っている。

曖昧さは、作品が始まった瞬間から観客を虜にする光の複雑な奥行きだけではない。実はこの作品は終盤に驚愕の展開が待っているのだが、そこに至るまでじっくりと描かれていくのは、人間の感情が持つ曖昧さだ。男は女を愛しているのか、あるいは女の身に纏わせる服を愛しているのか。姉は弟を愛しているのか、弟が生み出す芸術を愛しているのか。そして、女は男を愛しているのか、あるいは男に愛される自分を愛しているのか。ジョニー・グリーンウッドによるこの上なく優美なスコアも、時に登場人物の内面に大胆に侵入して、時に劇中の状況音とも呼応しながら、映画の“外”と“内”の境界線を溶かしていく。暗闇に柔らかな光が浮き上がるような映像設計と無音の時間にも音楽が流れていると錯覚してしまう音響設計を持つ本作は、まるで“フラジャイル”のタグが貼られた特別な贈り物のように、劇場で観られることを前提としている。

そして、映画でしか目にすることができない、それどころかもう映画でも目にすることができない、ダニエル・デイ=ルイス(本作撮影後に引退を表明)という役者の肉体。主人公レイノルズ・ウッドコックと一体化した彼は文字通りファントム(亡霊)となって、永遠に作品の中に漂うこととなった。いや、そもそも映画とはファントム(亡霊)のようなものなのだったのではないか? この作品でアンダーソンは我々にそう問いかけてくる。舞台は1950年代のロンドンだが、本作は極めて現代的な傑作だ。

 

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【関連作品】
ファントム・スレッド

(C)2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved

 

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