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『甘き人生』の映画論評・批評


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少年期の世界に留まり続けた男の甘美な夢が
観客を誘惑する

written by:佐藤久理子
(2017/06/28更新)

ジャンル 人間ドラマ
気分 しみじみと感動できます
原題 FAI BEI SOGNI
製作年/国 2016年/伊=仏
配給 彩プロ
ヘッド館 ユーロスペース
時間 130
公開日
監督

 


『甘き人生』


正直観る前は、イタリアの情けないマザコン男の感傷的な話かと思っていた。9歳で最愛の母を失ったことが受け入れられない主人公は、大人になった今もそのトラウマで真っ当な人間関係を築けず、新聞記者として戦地を駆け巡りつつ自己の人生と向き合うことを避けている。一見よくある話だ。だがそこは名匠マルコ・ベロッキオ。ともすれば主人公の自己陶酔話で終わる物語を、繊細に情感豊かに描き出し、観る者の心の襞にひたひたと染み入るようなドラマに仕立てた。

もっとも、本作はハッピーエンドのハリウッド映画のような、救済をうたった映画とはひと味異なる。癒しがあるのは確かだが、むしろそこに至る過程こそがこの作品の映画的醍醐味だ。主人公が子供時代の思い出に耽る、その夢の時間がなんと甘美で心地良いことか。まるでプルーストがマドレーヌの香りで幸福な幼少期を思い出すように、かつてのアパルトマンは母との至福の思い出を彷彿させる。原題意味は“よい夢を”。彼は30年もの間、夢を見続けることで、かろうじてサバイブしてきた。その夢があまりに耽美的に観客を誘うがゆえに、クライマックスに明かされる真実が深く突き刺さる。

 

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甘き人生

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