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『パターソン』の映画論評・批評


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ゆるゆると流れる
ありふれた日常に宿る輝きを掬いとった映像詩

written by:佐藤久理子
(2017/08/21更新)

ジャンル 人間ドラマ
気分 しみじみと感動できます
原題 PATERSON
製作年/国 2016年/米
配給 ロングライド
ヘッド館 ヒューマントラストシネマ有楽町
時間 118
公開日
監督

 


『パターソン』


ニューヨーク郊外にある小さな街パターソンで、バス・ドライバーをするパターソン(アダム・ドライバー)という主人公の1週間を描いた物語。まるでラップのように韻を踏む名前からして、何やらユーモラスな予感がするが、この映画にはこうした、些細だがこだわりのリピートが溢れている。そもそもパターソンの日常が繰り返しだ。いつも同じ時間に起床して、穏やかに隣で眠る妻を置いて仕事に出かけ、帰宅した後はおきまりの犬の散歩に出かける。こう書くと一見どこにでもいそうな平凡な主人公だが、そうではない。なぜなら彼は詩人だから。そして本作の監督は、『パーマネント・バケーション』や『ストレンジャー・ザン・パラダイス』など、“何も起こらないこと”を美しくもちょっぴり可笑しい映像詩に仕立てる俊才、ジム・ジャームッシュだからである。

もちろんパターソンは著名な詩人などではない。それどころか、彼には自分の詩を世に出したいという野心すらない。だが彼は、ふだん目にする風景にかけがえのない何かを認める眼差しと、それを愛でる心を持っている。バスの車窓の過ぎ行く景色に目を留め、乗客のたわいない会話に耳を傾け、いつも調子っぱずれな行動で彼を楽しませてくれる妻を思いながら詩を書き続ける。ゆるゆると穏やかに流れて行く時間の、なんと満ち足りていることか。ひょっこり遭遇する謎の日本人(『ミステリー・トレイン〈1989年〉』以来のジャームッシュ作品となった永瀬正敏)との会話にも、思わず微笑みたくなるような味がある。

世界がパターソンのような人ばかりだったらなんて素敵だろう、と思わせてくれるような作品だ。

 

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