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元祖!虚無なる微笑 ネタバレ

2015/5/23 16:08 by カケル

種々のメディアにわたるシリーズ中ファンの間でも評価の高い作品です。青春ドラマ、ミステリー、策謀劇、ロボット・アクションといった要素が有機的に絡まりあい過不足無い演出で描き出されてます。

私にとってこの作品に高評価を与えてしまう最大の理由は、独創的ともいえる真犯人の設定でした。
犯人帆場暎一は作品巻頭、不気味な嘲笑だけを残して画面から退場し、早々に犯人であることを明かされます。以降は犯罪計画とその人物像の解明が物語の骨子となります。犯人の死で始まる恐怖の遺産を巡るミステリーは、エラリー・クイーンの『(ピー!)』を偉大な先駆者として数々の傑作が存在します。その中で今作が傑出しているのは、コンピュータウィルスというアイテムの設定と犯人の人物像がついに解明され得ない点にあると思います。

まるで理解出来るものなら理解してみろと云わんばかりに転居記録以外の社会的足跡を全てのデータから消し去り、事の成り行きを見定めもせずに自死してしまうことで、「HOS」という巨大な惨劇を招く悪意の塊だけを後に遺していく。不合理極まり無いにもかかわらず感じられる不気味なリアリティは何処から来るのか。

進歩と繁栄の「近代的人間」は第一次世界大戦の惨禍 (日本に於いては太平洋戦争) によって根底に渡って破壊しつくされ、 その空虚を埋めようと人々は共産主義革命、ナチズム、民族革命、60年代社会運動などの種々の観念を生み出します。しかし東西冷戦の終結によってその企ては無効化され、再び無意味の地平へと差し戻されてしまいました。「空ろな人間」に残されたのは世界への違和とそこから滲み出る悪意だけ。帆場の立つバベルの塔の頂きから見える光景とは、現在まで続くこの虚無の焦土ではないでしょうか。
バブル経済によるモラル無き都市改造批判は一つの契機ではありますが、全てをそこに帰せてしまっては 現実に今なお続くHOSウィルスの脅威を見誤ることになります。

絶対の自信があるとはいえ成り行きも見定めずに死んでしまう犯人にはかなりの違和感を感じますが、文字通り己れの生と引き換えに生み出したプログラムは、悪魔の如き狡猾さと冷徹さで特車二課の面々を追い詰めてゆきます。クライマックスのウィルスが残存するユニットに散弾を叩き込み続けるシーンは、手の付けられなくなった怪物をなりふり構わず抑え込もうとする生々しさが漂っています。創造者の空虚さにひきかえ、異様なまでの存在感を発揮する電子的被造物の跳梁は、まるで帆場が乗り移ったかあるいはプログラムが自身の生成の為に帆場という人間を利用したかの様な奇妙な転倒を現出せしめてます。(ホラーとして読み替えれば瀬名秀明『(ピー!)』、鈴木光司『(ピー!)』となります。)
後の『攻殻機動隊』で全面展開されるテーマの端緒を此処に見出だすことが出来るでしょう。
この特異性に比べれば、『2』における柘植行人(更にプロトタイプといえるOVA『二課の一番長い日』の甲斐)は、思想的実質を吹き込まれている分キャラクターとしてやや後退している感が否めません。むしろ実体としてのクーデターではなく幻影としてのクーデターを現出した犯行内容にその空虚性を読み取ることができます。

今年この両者を統合する形で創られた実写版においては、Ash(灰)と名付けられた「何か」が、あの底知れぬ虚無の淵より悪意に満ちた嘲笑を再び私たちに投げ掛けています。

思えば、ベルリンの壁崩壊と同年に今作が公開されたことには偶然とはいえ象徴的なものを感じざるを得ません。
あの日始まった21世紀は何処へ向かうことになるのか。

「何処から来て、何処へ行くのか。我々は何者なのか。」

 



満足度データ

機動警察パトレイバー 劇場版
100点
13人(15%) 
90点
19人(22%) 
80点
25人(29%) 
70点
13人(15%) 
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10点
3人(3%) 
0点
1人(1%) 
採点者数
85人
レビュー者数
23
満足度平均
77
レビュー者満足度平均
80
ファン
17人
観たい人
26人

 

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