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解題
2018/4/13 23:10
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無責任な傍観者
今回は解題というよりも、解作品かな。
本作はスポ根です。文句なしにスポ根です。
しかし、作品は実にロジカルに作られています。
1.お父さんは実は娘たちの自主性を最大限尊重しています。
家父長権が強大なので命令はしますが、彼女たちを叱りません。
男である甥は殴っても、娘は殴らない。サボタージュが分かっても叱らない。
第一に、お父さんがあの二人をレスリングの選手にしたのは彼女たちに才能があったからです。三女四女には全く手を掛けてない。
「まずは一年」と言ったのも、言い逃れじゃなくて、ホントにそう決めたんでしょう。だからサボタージュに対しても、叱ることなく手を上げることなく、淡々と練習を続けようとした。彼女たちが本当にやめると決心したならそれを受け入れるつもりだったと思います。結婚式明けの下りはそういう描き方だと思います。
2.お父さんは常に合理的に問題解決を図っている
お父さんは一見横暴ですが、実は合理的に問題の解決を図っています。
他人の目や授業の居眠り等、彼女たちの人生にとって問題ない物は無視。しらみだかの寄生虫は問題だから髪を切る。女性にとっては髪を切るのは大変なことだけど、性別を除けば合理的な解決法。その後も、対戦相手を探したり、タンパク質補給のための交渉、マットがなかったり、コーチの減量方針、立ち入り禁止&外出禁止の状態の時、全てその時々の条件に合わせて合理的な解決を図ってる。
3.お父さんの信念は選手の育成です。
育成については、根っこにあるのは愛情であり、情熱であり、理論です。
父娘は親子ではありますが信頼で結ばれている。コーチと娘は職業指導者と教え子に過ぎない。当たり前だと言うかも知れませんが、一度は娘もコーチの指導が絶対で父の指導は古いという確信を持っていたのです。
でも負けた。コーチはギータが負けたときに、なぜ負けたかを考えることなく、国際試合に向いてない、という結論を出し、本人に伝える
対して、父は娘の復帰第一戦であるコモンウェルス大会初戦、いくら父と出直しで挽回を図っても試合が劣勢で自信が揺らぐ。そこでの父の第一声は「お前は勝てる!」これは泣けるね。
決勝に進んだときのコーチの台詞は、「俺の指導のおかげ」。優勝したときの父の台詞は「お前は俺の誇り」
まあ、インタビューで「今回の勝利の名誉は全て父に捧げます」と言いたくなるのは分かるよね。
4.お父さんとコーチは好対照
まず最初に言っておきたいのは、お父さんはコーチの技自体は否定していない。帰ってきたときに否定したように見えるけど、その後の試合でコーチの教えた技は全く気にしてない。つまり、帰省時に咎めたのは、技だけに頼る娘の姿勢だったのです。
コーチは最新の流行したテクニックを選手に教えれば良いと考えているのに対して、父は相手との戦いをどう勝つかを考えている。技をどう使うかは関係ない。相手によって攻めるのか守るのか。コーチは独りよがりに技が最新であること、選手が攻めるので成功したら、攻めろ。相手は全く見ていない。
父は実践向きで、コーチは論語読みの論語知らずで知識が何の役にも立たないタイプ。
5.作品の構成もキチンとしてる。
思春期の娘の反抗期とか、新しい物を覚えたときの喜びと盲信は当たり前にあることで、それに対する解決もリーズナブルに描いている。女性の地位に対する思いも最初の可哀想な花嫁と最後に最強の敵と戦う娘にアドバイスする父の言葉と、最初に二人に家事はさせるな、と言った父の言葉。彼女たちを成長させて、最後は独り立ちさせる巧妙な伏線。最初の地元試合で一番強い相手を選んで恐怖に打ち勝ったのと、コーチの元一番弱い相手(51kg階級)を選ばせようとする展開。
ビジュアルありきでストーリーの齟齬には全く理解がないスターウォーズの7,8やマーベルのアベ2、シビルウォー作った無能で思考力欠如のクズ製作者どもに正座させて見せたい作品です。
というわけで、ストーリー構成やテーマとキャラクターたちの個性と一貫性を考えて、ずば抜けた完成度の作品です。だから、本作は今年度のNo.1になると予想しています。
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