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アボット的時間 ネタバレ

2017/10/21 8:28 by IKA

メッセージ

レビューの方では、この作品の「時間」を「円環的時間」と書きましたが、そのあといろいろ考えて、つぎのような結論?にたどりつきました。ネタバレを含むので、こちらに書かせていただきます。

時間というものは、直線状の時間も円環状の時間も、実はない。両方とも人間の脳の錯覚であって、本当にあるのは、「今」だけ。これはだれしも認めるところだと思います。

過去も未来もない。あるのは今だけ。動物が過去とか未来とか考える?というと、とてもそんなふうには思えなくて、過去や未来は、人間の複雑すぎる脳がつくりだす「妄想」にすぎないということです。

では、「今」というのは「点」、プンクトなの?というと、これもウソ……というか、「今」を「点」で特定できると考えるのも、実は、過去とか未来と同じように、人間の脳のつくりだす特有の妄想ではないか……

私の考えでは、「今」というのは、いわば「量子論的雲」であって、ぼやっとにじんで広がっている。その範囲はだいたい3分くらいかな……と思うのですが、そんな感じで、動物たちは感じているんではないだろうか……

人間の複雑すぎる脳が、「今」を特定できる「点」としてつくりあげて、その点をかってに延伸させて、過去や未来をつくりあげてしまっている……と、そういうふうに感じるんですが。

だから、この映画で出てくるエイリアンの「時間」も、便宜上「円環的」といってますが、実は、この考え方からすれば、人間の感じる「今」と、彼らが感じる「今」の「確率の雲」の範囲が大きくちがう……という解釈も成り立つのでは……と思います。

ルイーズは、物語の最後に、携帯電話で中国のシャン上将と会話するけれど、その会話の「今」は、なぜか1年半後に開かれるパーティーで出会うシャン上将との会話とリンクします。

直線状の時間の考え方では、この場面はどうしてもルイーズの「未来予知」みたいなことになってしまうのですが、でも、見ていて、これは今までの「未来予知」ではないなあ……と感じた。

現在というプンクトで、未来のある時点のプンクトを予知する……というよりも、むしろ2つとも「今」という感覚の方が強い。ということは、この時点ですでに、ルイーズの「今」の雲は、通常の人間のそれよりもはるかに大きく拡大している……ということではないか。

つまり、ルイーズにとっては、携帯で話している「今」も、パーティーで直接会って話している「今」も同じであって、それは全体が「今」……こういうふしぎな「時間感覚」を、彼女は、エイリアンとコミュニュケーションを重ねるうちに習得した……ということではないでしょうか。

いや、むしろ、それは、彼女の最後のコンタクトの状況にあったのかもしれない。むろん、それまでのコンタクトは、一種の「準備状態」として彼女の中に蓄積して、彼女をそこまでの「高み」に連れて行ってくれるハシゴの役割を果たした……ということなのでしょうが。

そして、最後のコンタクトで、彼女はエイリアンの「アボット」(じゃなくてコステロか)と直接触れ合い、そこで「奥義」を伝授された。物語の流れでいうなら「武器」を渡された……ということなのでしょう。

この「最後のコンタクト」では、これまでのようにエイリアンと彼女を隔てる「壁」がない。母船から降下してきたスカウトシップの中で吸いこんだふしぎな気体の効果で、物理的にはそれが可能になった……という説明と感じましたが。

ともかく、ここで、彼女の脳……というか存在自体が「改造」されて、彼女の「量子論的今」の雲は大きく広がり、1年半後に開かれるパーティーもそのうちに含まれる広大なものになってしまった。

だから、これは、「未来予知」というよりも、どちらも「今」なのですね。で、そこでクローズアップされてくるだいじな要素がもう一つあって、それは「自由意志」ということではないでしょうか。

人間は「自由意志」で未来を選択する……といいますが、実際にはなかなかそうはいかない。それはなぜかというと、人の脳は過去を思い、未来を考え、そして「今」を「点」としてとらえるから。

だから、実際には、人間の取りうる行動というのは、因果律で固くしばられることになる。結局「決定論」になる。自由意志で行動したと思っても、実は……というあの論理です。

しかし……この映画が語るように、「今の雲」が、現在の人類が感じているよりはるかに大きな範囲を覆えるようになったらどうでしょうか。すべては一緒にその中にある……ここから、人の「自由」はどうなるのか……

ニーチェの『ツァラトゥストラ』では、汝はまったく同じことがくりかえされるにしても、それを選択するか? と問われて、「イエス」と答える。これはもう、完全な決定論のように見える……

実際、私も、ツァラトゥストラを読んだときはそう感じました。この映画でも、ルイーズは同じような問いに直面します。自分の子(HANNAH)はある年齢までしか生きられないとわかっていても、それを選ぶの?という……

これを、「決定論」を迫られる「苦しい選択」と見てしまうのは、実は、今のわれわれの脳が、過去も現在も未来も「点」としてしか感じられない構造になっているからであって、「今」が拡大した「アボット的時間」では、実はそうではないのではないか……

映画の中でも、「今を大切に」でしたか、「瞬間を大切に」でしたか、そんなことが言われていましたが、「アボット的時間」では、そういう感覚が、「自由意志」の大きな要素になっているのかもしれません。

ともかく、この映画は、なにか根源的なところで、今の人間の「限られた」脳の構造を「開いていく」というメッセージがこめられているように感じる。原題は「アライバル」でしたが、邦題の「メッセージ」は、そういう意味を考えると、もしかしたら映画の本質により迫るものだったかもしれません……


*原作は未読ですが、この映画は、伝えたい本質を、映画ならではの特性をうまく使ってやってるなあ……と感じました。

映画は、シーンの積み重ねとしてつくるけれど(1本分長回しを除いて)、それは、必ずしも「時間順」に並べる必要はなくて、「編集」でどうにでもなる。撮影も、むろん「時間順」にやらない。

そういう点では、映画というメディアは、その本質の部分で、すでに「直線状の時間」概念を超えたものとして出されている……という理解も可能かと思います。

これを他のメディアでやろうとすると、やっぱりちょっと不自然になる。小説なんかで、むしろ映画の編集方法を取り入れて、過去も現在も未来もバラバラに混ぜてやってるものもありますが、けっこう苦しげな感じがつきまとう。

でも、映画は、ごく自然にそれができてしまいます。いろんな「時点」のシーンをあらかじめ撮っておいて、あとで「編集」でいいようにシャッフルしてつなげてしまう。人類は、「映画」というメディアを獲得することによって、この新たな時間認識の方法を、ごく自然に手に入れた……ともいえる。

そういう意味では、ルイーズがアボットたちと「会話」することによって自然に新しい「時間認識」を手に入れていったように、人類は、「映画」というものを見せられることによって、自然に直線状時間をシャッフルして組み合わせる「新しい時間認識」を手に入れた……ともいえるかもしれない。

だから、思いました。見終わったあとで……この映画を、もし小説でやるとしたら、最後のシャン上将との会話シーン、どうやって表現するんだろう……と。映画ではごく自然にやってましたが、これを小説で書くとなるとかなり説明的になって難しいことになるんじゃなかろうか……と。

しかしまてよ……この映画、原作があるんじゃん!……ということは……原作未読なので、「あのシーン」があるのかないのか、それは知りませんが、いったいどうなってるんだろう……

ということで、映画と原作の因果関係みたいになってくるのですが……でも、どっちが先?というのも、結局は直線状の時間に取り憑かれた脳の妄想にすぎないのであって、映画も原作も同じ「今」みたいなアボット的時間概念が……

ということで、やっぱり今の因果律と直線状時間と点としての過去現在未来にとらわれた私の脳ではわからないです……

 



満足度データ

メッセージ
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採点者数
138人
レビュー者数
62
満足度平均
74
レビュー者満足度平均
74
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観たい人
79人

 

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